研究概要 |
2002年度に世界で始めてIncoherentな回折放射による可視光測定に成功した(Physical Review Letters, Volume 90,Number 10,104801-1,14 March 2003)。非破壊ビーム診断への応用を実証するためには、金属薄膜にスリットを高精度で製作して、スリット中心を電子ビームが通過する実験を行い、上下のスリット端部からの回折放射光の干渉パターンを高精度で測定できることを示すことになる。金属薄膜はシリコン板(厚さ200ミクロン)に金を1ミクロン厚で蒸着して、製作した。スリットは化学的な方法により260ミクロン幅になるように製作を企業に依頼した。スリットのある標的の平面度等をレーザー干渉計で測定した結果、平均表面粗さは20nm程度であることが確認できた。これにより上下のスリット両端部からの500nm可視光による干渉測定にこの金属薄膜標的は十分である。 2003年にスリット標的による電子ビームサイズ測定実験を開始した。本測定では約10m上流の偏向電磁石からの放射光と回折放射光の干渉が問題になった。この問題を解決するために標的の上流50cmにマスクを設置して、偏向電磁石からの放射光を低減した。この結果、干渉パターンとして理論計算で予測できる結果と測定誤差範囲内で一致する測定結果を得た(Physical Review Lettersに投稿中)。 この研究開発では電子ビームが標的スリットを通過するだけで、測定干渉パターンから電子ビームサイズおよび電子ビーム軌道変動を1ミクロン以下の高精度で得ることが目的である。現状では検出器の感度が不十分なために多数回の電子ビーム通過からの回折放射光データを蓄積して、基礎的な実験を行っている。2004年度は検出器の感度を上げて、一回の電子ビーム通過で電子ビームサイズが得られるように装置を改良する。
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