2次元電子系基板の表面側に変調ポテンシャルを導入するための電子ビームリソグラフィー法による微細加工格子を、背面側に電子濃度を制御するための一様金属ゲートを取り付けた1次元平面超格子試料を作成し、低温・強磁場の量子ホール領域での抵抗の詳細な電子濃度-磁場依存性の測定を行った。その結果充填率が4〜8の領域に於いて、僅かな電子濃度増による、量子ホール間遷移ピークの急激な増大、およびピークの分裂を見出した。また分裂したピークの谷間は熱活性型の温度依存を示し、また谷間の位置は電子濃度に依らず一定磁場の位置に現れることを見出した。さらに、電子濃度の増減に対するピークの特異なヒステリシス現象を発見した。これらは、理論的に存在が予言されているストライプ相(電荷密度波状態)の、外部変調への応答を見ているものと解釈できる。 また、充填率1/2付近の複合フェルミ粒子の変調下での振る舞いを理解する上で不可欠な、ゼロ磁場付近での(電子の)磁気抵抗の振る舞いを、周期や変調振幅の異なる複数の平面超格子試料に対し種々の電子濃度で、詳細に定量的に調べた。その結果、現在まで信じられていたのとは異なり、低磁場での正の磁気抵抗に対するチャンネル軌道の寄与は小さく、主として、不完全なサイクロトロン軌道がその要因となっていることを明らかにした。 また、磁気抵抗に現れる微細な構造をより正確に測定することが可能となるように、抵抗の磁場微分や、電子濃度微分を直接測定するための2重ロックイン測定法の最適条件の探索を行った。
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