研究概要 |
本年度は、リラクサー強誘電体混晶の静的なドメインウォール構造の観察を行った。リラクサー強誘電体混晶Pb(Zn_<1/3>Nb_<2/3>)O_3-PbTiO_3のうち、正方晶相を示すPZN-20%PTと、室温で菱面体晶相を示し濃度相境界に近いPZN-8%PTのエッチング処理表面のAFMおよびEFM観察を行った。PZN-20%PTでは、90°および180°ドメインウォール構造を観察した。EMFによる焦電効果の測定により、各ドメインにおける自発分極の方位を決定できた。PZN-8%PTでは、(001),(110),(111)に垂直な表面の観察から、180°,109°,71°のドメインウォール構造が観察できた。(110)面の観察では、新たにジグザグタイプのパターンを示すドメインウォール構造が見いだされた。これらのドメインウォール構造の解析では、弾性的な条件であるSaprielの理論と、ドメインウォール表面で分極電荷が存在しないという電気的な条件の両方を満たしていることが確認できた。PZN-8%PTにおいてチャージドウォールは存在しない。PZN-8%PTの濃度相境界における正方晶相と菱面体晶相の相転移は、散漫な相転移であることが指摘されているが、本研究によって、局所的にはシャープな相転移をし、転移温度が場所に依存して分布していることがわかった。また、室温でのドメイン-ウォール構造は、通常の強誘電体と同様に古典論によって理解できることを実験的に示した。
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