研究概要 |
1)半導体多層膜キャビティの中に量子井戸からなる2次元キャビティポラリトン系に表面音響波(SAW)を伝播させることにより,斜入射光に対する反射スペクトルと種々のブラッグ回折光スペクトルに顕著な変化が生じることを「繰り込んだグリーン関数」の方法により示した.SAW振動数や強度,キャビティのQ値(多層膜のDBR対の数),キャビティモードと励起子の離調,等を含む現実的なモデルを用いた数値計算により,応用展開を可能にするさまざまな状況が現れることを系統的に示した.SAWによる感受率共鳴項の変調と,キャビティポラリトンの共鳴応答に沿って測定量を考えるという点で従来の音響光学に比べてはるかに大きな効果が現れる. 2)フォトニックバンドの光学応答を計算するとき,外部入射光に対して内部に生じる伝播波・減衰波を精度よく求める必要があるが,従来知られているPendryの転送行列の方法は強い減衰をする波の波数について精度が急激に落ちるという欠点があった.これを解決する新しい方法を提案し,具体的なモデルに対して反射・透過スペクトルを計算して新しい方法の精度が明らかに改善されていることを示した.さらにこの方法の応用として,同じミラー指数の表面でも切り口の位置で応答スペクトルが大きく違うという(以前から予想されていた)問題に対して初めて具体的な計算結果を与えた。 3)光学応答の3次非線形感受率を与える一般的な理論的表式は分極(または電流密度)演算子の3重交換関係を時間について3重積分するという形をしていて,自由なボーズ粒子系については完全にゼロになるが,3重交換関係を展開して得られる8つの項の一つ一つはゼロでないので,それらの各項の間に相殺があることを意味している.現実の系がゼロでない値を持つのは,電子系に働くPauli排他率と電子間相互作用の存在によるが,この2つの効果を一般的に取り入れた上で相殺効果をきちんと扱う方法論については知られていなかった.これについて,最近Combescotの開発した「交換子の方法」が有効であることが分かり,一般的な真性半導体の場合について単一周波数励起による3次非線形感受率を与える解析的表式を導いた.この結果は,1990年にIshihara-Choが一次元Frenkel励起子系の取り扱いを一般的に拡張して形になっており,Pauli排他率効果と相互作用の効果を別々に評価できる形になっている.
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