研究課題/領域番号 |
15540312
|
研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
高橋 聡 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教授 (80212009)
|
研究分担者 |
相原 正樹 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (70091163)
|
キーワード | スピンと電荷の自由度の分離 / 過渡的4光波混合 / 超高速ダイナミックス / 低次元強相関電子系 |
研究概要 |
「研究計画」で述べたように、1次元および2次元強相関ハバードモデルにおいて、過渡的4光波混合の信号を数値的に厳密に計算した。2連光パルスの時間間隔を変えながら、過渡的4光波混合の信号のパルス照射後の経過時間依存性、およびその時間積分値を求め、これらのクーロン相互作用強度依存性を詳細に調べた。過渡的4光波混合の信号強度は、以下に述べる電荷およびスピン自由度の緩和に極めて敏感に反応し、以下のような新しい知見を得ることができた。2次元系においては、初期段階で電荷がまず拡散して行き、この拡散運動によって作られた新しい電荷配置に対応して、スピン構造の再配置がより遅い時間スケールで行われることが分かった。このように、電荷とスピン自由度の緩和が、はっきりと2段階に分かれて観測されることは、電荷自由度とスピン自由度が近似的に分離し、これらが弱く結合しているという描像が成り立つことを示している。1次元系では、スピンと電荷の自由度の分離がほぼ厳密に成立しており、光励起により電荷の運動のみが誘起され、スピン構造はほとんど変化しないことが明らかになった。この結果をPhysical Review Bに発表した。このようにして、「研究目的」で述べたように、過渡的4光波混合によってダイナミックスを調べることにより、スピンと電荷の結合の様子が明確に見えてくることがわかった。 「研究計画」に記した来年度の課題の予備計算を行った。強いクーロン相互作用を仮定しない長距離クーロン相互作用を加えた計算を行い、弱相関領域においては、光励起状態に、(1)正負の電荷がバウンドする、(2)遷移モーメントが特定の励起状態に集中する、などの強相関領域とはまったく異なる性質が現れることを明らかにした。
|