研究概要 |
(1)ビーム径0.7x1.0mmのマクロビームを用いた実験 長鎖アルカンを油相とした水中油滴型エマルション(油滴の直径を10,30,45マイクロメートルに調整)にマクロビーム放射光X線をあてながら、冷却過程とその後の加熱過程における油滴の結晶化および融解挙動の経時変化を調べた。その結果、ヘキサデカン(炭素数16の長鎖アルカン)に回転相の存在することを示唆する回折ピークが見出された。この結果は、1999年にバルク系で報告されている結果(E.Sirota et al.,Science 283,529-532(1999))と一致する。しかし、上記バルク系における報告では非常に限られた温度条件でしか存在しないと指摘しているのに対し、エマルションのような油水界面が多数存在する状態では、冷却過程において、必ず回転相が出現するという点がバルク系と異なり、今回初めて得られた知見である。現在、然るべき国際的学術雑誌に投稿準備中である。 (2)ビーム径5.0マイクロメートルのマイクロビームを用いた実験 レーザートラップ法により、上記と同様のエマルションの固定は技術的に可能となり、何度か測定も試み、データも得たが、問題点として、レーザー照射による油滴中の温度上昇を十分に制御できず、レーザートラップ法ではうまくいかないことが判明した。そこで、油滴の固定と温度制御の両方を行うことの可能な代替法として、マイカの薄膜内に試料を閉じ込め、薄膜の両側(壁面)で油滴を固定することを考え、代替法として利用可能であることを確認した。今後、測定を本格化する予定である。
|