研究概要 |
レーザー光を非線形結晶に入射しパラメトリック下方変換を行うと強い量子相関を持った2つの光子が放出される。この双子の光子で結晶を励起するとその励起状態は通常の2光子励起とはかなり異なったものになると予想される。我々はこの実験を強い励起子発光を伴う結晶TlBrを用いて行った。 ・沃素を微量に添加した結晶TlBr(I)の間接励起子領域を波長可変ナノ秒Ti:Sレーザー光(455nm,パルス幅10ns)で1光子励起し緩和過程を調べた。その結果、2Kでは光生成された間接自由励起子は沃素イオンに捕捉され、自己束縛励起子となり、一定の寿命を持った発光を伴って再結合消滅する。4K以上では自由励起子は熱的に不安定になり、自由電子と自由ホールとに分離し、それぞれの捕獲中心に捕捉される。その後これらの束縛電子と束縛ホールはトンネル再結合により自己束縛励起子となり、発光を伴って再結合消滅することが分かった。 ・波長可変ナノ秒Ti:Sレーザーの基本波(800nm,パルス幅10ns)およびパルス幅の非常に短いフェムト秒Ti:Sレーザーの基本波(800nm,パルス幅100fs,繰り返し80MHz)でTlBrの直接励起子の2光子励起を行った。その結果、光生成された直接自由励起子はすぐに間接励起子に緩和し、1光子励起下での緩和と大きな差は見出されなかった。 ・フェムト秒Ti:Sレーザーの2倍波(400nm)でBBO結晶(TypeII)を励起し、縮退パラメトリック変換により400nmの波長を持った、もつれ(エンタングル)状態の光子対を発生させた。しかし、現在のところ冷却CCDカメラでやっと検出できる程度に光子数が非常に少なく、TlBr(I)の発光を検出するに到っていない。 ・現在、色素レーザーアンプでレーザー光強度を増強すること、および1パルスあたりの光強度が大きいナノ秒Ti:sレーザーの2倍波(400nm)でパラメトリック下方変換を試みており、今後、これらの光を励起光源としてTlBr(I)の発光を調べていく。
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