研究概要 |
本年度の主な課題は,異常磁気抵抗の(1)電子濃度依存性,(2)ニッケル蒸着膜のサイズおよび形状依存性,について調べることであった. 初めに電子濃度の異なる4種類の基板を用いてゲート電極付き試料を作製し,ゲート電極の上に直径2μm,厚さ200nmのNiディスクを蒸着した.これらの試料を用いて,電子濃度および移動度と異常磁気抵抗の関係を調べた.ゲート電極により電子濃度を0.33〜3.5×10^<15>m^<-2>の範囲で変化させたとき,移動度は約0.9〜67m^2/(Vs)の範囲で変化した.この実験結果から,異常磁気抵抗の有無を電子濃度対移動度の相図で整理すると,異常磁気抵抗と電子濃度および移動度とは相関がないことが分かった.また,異常磁気抵抗が現れた試料に共通して見られた特徴は,二次元電子系(2DEG)とNiディスクとの距離hが300nm以上であることがわかった. そこで,異常を観測しなかった試料と同じ基板を用いて,ゲート電極を厚くすることにより距離hを300nmにした試料を作製し測定を行った.距離hを変えることは2DEG上での磁場分布を変えることになる.しかし,いずれの端子においても異常は観測されなかった.まだ1つの試料で測定を行っただけなので,今後さらに実験を重ねる必要がある. 次に,Niディスクの直径を変えて,2DEG上での磁場分布を変えた試料を作製し,異常磁気抵抗との関係を調べた.試料は,これまでの直径2μmに加えて,4μm,および6μmのものを作製した.測定の結果,直径6μmの試料では抵抗異常が観測されたが,4μmの試料では抵抗異常は観測されなかった.この違いの原因については現在検討中である.また,Niディスクの形状依存性については,一辺4μmの正方形および菱形のNi蒸着膜の作製を試みたが,正常な形状の試料を作ることができなかった.形状を改良して今後実験をおこなう予定である.
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