研究概要 |
本研究の課題は,強磁場中の単一微小強磁性体薄膜を載せたGaAs/AlGaAsヘテロ構造試料で観測される異常磁気抵抗の(1)電子濃度依存性,および(2)局所磁場分布依存性を調べることである. (1)については,電子濃度の異なる4種類の基板を用いて単一微小ニッケル円盤を載せたゲート電極付きの試料を作製し,電子濃度および移動度と異常磁気抵抗の関係を調べた.この実験結果を電子濃度対移動度の相図で整理すると,異常磁気抵抗の有無と電子濃度および移動度とは相関がないことが分かった. (2)については,ニッケル薄膜と二次元電子系の距離,薄膜のサイズ,膜厚,形状の異なる種々の試料を作製し,異常磁気抵抗の局所磁場分布依存性を調べた.また,磁場を傾けニッケルの磁化を異方的にすることにより,局所磁場分布依存性を調べた.これらの実験結果からは,この異常磁気抵抗と単一微小強磁性体薄膜の作る局所磁場分布の極小との間に相関があることが強く示唆される.しかしながら,すべての実験結果を合理的に説明することはできなかった. 今後,この異常磁気抵抗と局所磁場分布の極小の関係は,さらに実験を行い検証する必要がある.局所磁場分布を変える方法として,ニッケルよりも磁化の大きい強磁性体を用いること,また,極小の増大と異方性とを同時に実現させる薄膜形状を検討すること等が必要である.
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