研究概要 |
充填スクッテルダイト型化合物はRT_4X_<12>(R=希土類,Th,U;T=Fe,Ru,Os;X=P,As,Sb)と表される。結晶構造はBCC(空間群#204,Im-3,T_<h^5>)で,希土類イオン位置の点群は立方対称T_hである。RとTの位置は一義に決まるが,Xの位置は(0,u,v)と書かれ,2つの内部パラメータuとvで表される。希土類イオンは12個のX原子よりなる20面体の中心に位置しており,このような結晶構造が異常物性の起因の1つと考えられる。 1.4f電子に対する結晶場効果 我々は既に,立方対称T_hの場合の結晶場は,従来の立方対称O_h等の場合に比べ新たな6次の項が加わることを群論的考察から示した。この6次の項はX原子のみから生ずる。よって,希土類イオンに働く結晶場の内部パラメータ依存性を,点電荷模型で詳細に調べた。点電荷模型で結晶場を求める場合,希土類イオンの周りで同じ距離を持つ原子を殻と考えて,各殻からの寄与を順次加えていく。この各殻からの寄与の解析的表式が得られたことから,内部パラメータ依存性が明確に議論できるようになった。 2.電子構造計算 従来は希土類として占有4f電子数が0(La),1(Ce),2(Pr)個の場合が主に調べられてきた。これに対し我々は,占有4f電子数が多い場合(7個,Eu)の計算を始めた。特に,EuT_4P_<12>系は強磁性体であり,充填スクッテルダイト型化合物の中で磁性参照物質として重要な位置を占めている。同時に,この系では種々の異常磁性も観測されている。T原子を替えることによりEuT_4P_<12>系の電子構造の系統的変化を調べ,異常磁性の起源を解明中である。
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