セリウム六ホウ化物希釈系のニチャンネル近藤効果と非フェルミ液体の研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15540326
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 中村 慎太郎 東北大学, 極低温科学センター, 助手 (20292310)
• 研究分担者: 青木 晴善 東北大学, 極低温科学センター, 教授 (60302246)
• キーワード: Ce_xLa_<1-x>B_6 / 非フェルミ液体 / 量子相転移 / 重い電子系 / 強相関係 / 近藤効果

研究概要

Ce_xLa_<1-x>B_6のCe濃度を変化させると近藤効果とRKKY相互作用の競合状態が変化することにより,臨界濃度を境にして長距離秩序相から無秩序相への不連続的な変化が起る.これはRKKY相互作用の強さをパラメータにした量子相転移であると言える.一般に磁性体の量子相転移点近傍では強い電子相関があり,非常に重い準粒子や非フェルミ液体が実現するとされている.本年度はCe_xLa_<1-x>B_6の量子相転移点近傍で強い電子相関と非フェルミ液体が実現しているかどうかを調べるため,極低温下の電気抵抗の温度変化を調査した.電気抵抗の測定には単結晶試料を用い,希釈冷凍機によって試料を極低温まで冷却した.
本年度の研究成果として以下のことが明らかになった.(1)Ce_xLa_<1-x>B_6の量子臨界点近傍では電気抵抗のT^2項の係数が非常に大きく,伝導電子間に強い相関がある.(2)電子相関は量子臨界点近傍に向かって急激に大きくなる.(3)量子相転移点近傍の秩序相では転移点の直近まで伝導電子は重い準粒子を構成しており,重い電子系が形成されている.(4)量子相転移近傍の無秩序相では電気抵抗は温度にT^2項が見られず,比較的広いCe濃度範囲で非フェルミ液体の振舞を示す.これらの量子臨界点近傍の伝導電子の振舞は近藤効果RKKY相互作用競合系の圧力誘起にともなう量子臨界現象とは異なっている.おそらくこの原因はCe_xLa_<1-x>B_6の結晶場基底状態Γ8が電気四重極子を持っているためと思われる.

研究成果

• [文献書誌] S.Nakamura et al.: "Transport properties of the dense Kondo system Ce_<0.5>La_<0.5>B_6 at low temperatures"Journal of Physics (Condensed Matter). 15. 2167-2170 (2003)
• [文献書誌] S.Nakamura et al.: "Field induced transition from non-Femi liquid state to heavy fermion state in Ce_<0.5>La_<0.5>B_6"Physical Review B. 68. 100402-100405 (2003)
• [文献書誌] T.Yamaguchi et al.: "Thermal expansion and ultrasonic measurements of ferroquadrupole ordering in HoB_6"Physica B. 329. 622-623 (2003)
• [文献書誌] M.Akatsu et al.: "Elastic properties of the Kondo compounds Ce_xLa_<1-x>B_6(x=0.75 and 0.7)"Physica B. 329-333. 626-627 (2003)
• [文献書誌] M.Akatsu et al.: "Trigonal lattice distortion and ferroquadrupole ordering in phase IV of Ce_xLa_<1-x>B_6"Journal of Physical Society of Japan. 72. 205-208 (2003)
• [文献書誌] T.Goto et al.: "Quadrupole and lattice effects of orbitally degenerate 4f-electron system"Journal of Physics (condensed Matter). 15. 2101-2107 (2003)