セリウム六ホウ化物希釈系の電子の基底状態を明らかにするため、電気抵抗率の温度変化、磁場変化、dHvA効果を測定した。セリウム六ホウ化物希釈系においては低磁場、低セリウム濃度領域では長距離秩序が発生せず、無秩序相をとる。本研究によりこの無秩序相では基本的に電気抵抗は温度の二乗に比例した温度変化を示さず、非フェルミ液体的な振る舞いを示すことがわかった。また、この非フェルミ液体が実現する領域は広いセリウム濃度および磁場範囲に及んでいることが明らかになった。広いセリウム濃度と磁場範囲で非フェルミ液体が実現することはセリウム六ホウ化物希釈系における非フェルミ液体形成の機構が量子臨界現象ではないことを意味している。零磁場下においてセリウム六ホウ化物希釈系のセリウム濃度を高くしてゆくと、セリウム濃度が60%程度のところで量子相転移を起こし長距離秩序が発生するが、長距離秩序相では電気抵抗は温度の二乗にたいして線型な温度変化を示し、フェルミ液体の特徴を示すことがわかった。また、高磁場中ではセリウム濃度によらず電気抵抗がフェルミ液体の振る舞いを示すことが明らかになった。高磁場中でフェルミ液体がセリウム濃度によらず実現することはdHvA振動の観測からも裏付けられた。長距離秩序の発生や磁場がフェルミ液体を安定化することからセリウム六ホウ化物希釈系における非フェルミ液体の成因は局在モーメントの揺らぎによる可能性が高いことが本研究により明らかになった。
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