二重ペロブスカイト型マンガン酸化物RBaMn_2O_6について、R=Ndの大型単結晶をフローティングゾーン法で作製するための条件を詳細に調べた。その結果、次の方法が有効であることが分かった。初めに、空気雰囲気でRとBaが秩序化していない単結晶を作製する。次に、それを種結晶として、アルゴン雰囲気でフローティングゾーン法を行う。成長したRとBaが秩序化した単結晶は多くの酸素欠損を含んでいるため、空気あるいは酸素雰囲気下でアニールを行い、酸素量を化学量論に戻す。 こうして得られた単結晶の磁気抵抗を測定したところ、反強磁性温度(約280K)の温度が外部磁場印加によって大きく低下することが明らかになった。その結果、温度を適当に選ぶと、A型反強磁性相から強磁性金属相への磁場誘起相転移が観測された。また、反強磁性相における抵抗率は著しく異方的であり、c軸方向の抵抗率が高い。一方で磁場誘起強磁性金属相は、異方性が小さくどの方向の電気抵抗率も低い。結果として、c軸方向の電気抵抗率が磁場印加によって大きく減少することが発見された。240Kにおける磁場下の抵抗は磁場印加前のおよそ1/30にまで下がることが分かった。 このように大きな磁気抵抗を示す反強磁性相のスピン配列について、中性子散乱実験によりA型反強磁性であることを明らかにした。すなわち、RとBaに挟まれた一枚のMn-0層では、マンガンのスピンが強磁性的に配列し、それが層ごとに向きを180度変えている。さらに、この反強磁性相ではMn06八面体がc軸方向に著しく縮んでいることを中性子回折および放射光X線回折の実験結果より明らかにした。 このような八面体歪みは、x2-y2型のd軌道の占有率を高め、二重交換相互作用の働きを異方的にしてA型反強磁性を安定化していると考えられる。そのために電気抵抗も二次元金属とでも言えるような異方的なものとなると考えられる。
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