研究概要 |
二重ペロブスカイト型マンガン酸化物RBaMn_2O_6の相図上で強磁性金属、反強磁性電荷軌道整列絶縁体、反強磁性二次元金属の3つの電子相の境界付近に位置するR=Ndの系について、輸送現象の異方性を測定する目的でa, b, c軸方向の揃った単結晶の作製を試みた。通常作製した結晶は単純なペロブスカイト構造の意味では単結晶であるが、RとBaの交互積層の方向であるc軸がa, b軸と入れ替わることによる双晶構造となっている。この結晶の磁気抵抗を測定したところ、反強磁性温度(約280K)の温度が外部磁場印加によって大きく低下することが明らかになった。また、c軸方向の電気抵抗率が磁場印加によって大きく減少することが発見された。240Kにおける磁場下の抵抗は磁場印加前のおよそ1/30にまで下がる。 一方、物性研究の一環として、X線散漫散乱の実験を行い、三相の競合がどのように起こっているかについて明らかにした。また、電荷整列相においてc軸方向に三価と四価のマンガンが交互に積層するパターンであることを示唆したが、そのパターンの違いが格子振動にどのような影響を与えるかについて、R=Smの系におけるラマン散乱分光によって調べた。その結果、三価のマンガンがc軸方向に並ぶ場合と異なり、q=0におけるヤーンテラー型の格子振動で頂点酸素が動くことが許されるため、電子の分極率の変調が大きくなり電荷整列相におけるラマン散乱の強度が増強されることがわかった。 R=Ndの中性子回折の詳細な解析からは、強磁性的にスピンが整列したマンガンのシートがc軸方向に反強磁性的に積層していること、および、そのスピン整列が生じる温度でa, b軸長が突然伸び、逆にc軸長が縮むことを明らかにした。このことは、マンガンのd電子がx^2-y^2軌道に選択的に入った軌道整列とスピン秩序が同時に起きることを明確に示している。
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