研究概要 |
CoO_6八面体で構成された様々なコバルト酸化物では強磁性、反強磁性、超伝導が現れる。それらの電子状態の研究を通してCoの電子状態の制御の手法を探ることが大きなテーマである。(1)ペロブスカイト型コバルト酸化物Pr_<1-x>Ca_xCoO_3における圧力誘起金属-絶縁体転移のメカニズムを調べる研究を行った。(2)CoとO(酸素)の2次元三角格子を持つ超伝導体Na_xCoO_<2-y>H_2Oの超伝導電子対の対称性に関する研究を行った。 (1)(Pr_<1-y>R_y)_<1-x>Ca_xCoO_3(R=希土類元素,Y)に対して常圧、圧力下両方で構造解析と磁気輸送特性を調べ、金属-絶縁体転移の主な原因がCoO_6八面体の傾き角の増大によるCo間transfer energyの減少であることを明らかにした。R=Smの系ではyを1に(あるいはxを0)近づけると、金属-絶縁体の相転移がクロスオーバー的になり、これはスピンS=1状態にあるCoイオンの数の減少と関連付けられることを示した。 (2)Co核のナイトシフトKは超伝導転移温度T_cを挟んで降温時にT_c以下で減少するが、その温度変化から超伝導電子対がsinglet状態(s, d, g, i等の対称性をもつ状態)にあることがわかった。T_cへの不純物効果はs波の等方的超伝導の可能性を示唆するが、Co核磁気緩和率の温度変化にT_c直下でコヒーレンスピークが見られないことは非s波の異方的超伝導の可能性を示し、2つが矛盾しているように見える。しかし超伝導状態で準粒子の寿命を考慮すると、等方的超伝導体としてCo核磁気緩和率の温度変化も説明されることがわかり、この系の超伝導対称性がs波である可能性が強い。また、超伝導体の母物質、Na_xCoO_2の研究からxが0.6より小さい領域ではCo間に2次元反強磁性的磁気相関をもつことがわかった。これは水和物の超伝導状態がsinglet対であることを支持する。
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