研究概要 |
平成15年度は(1)量子臨界点近傍物質Ce_2MIn_8(M=Co,Rh,Ir)の純良結晶育成条件の追求、(2)dHvA効果測定用圧力セルの設計製作、(3)希土類 遷移金属 Ga三元系物質における超伝導物質探査を行った。 (1)重い電子系超伝導物質Ce_2MIn_8(M=Co,Rh,Ir)について良質単結晶の育成を目標とし、常圧で超伝導を示すCe_2CoIn_8および量子臨界点約2.5GPaのCe_2RhIn_8についてInフラックス法による結晶育成を行った。Ce_2RhIn_8では結晶が大きく成長する育成温度領域を見いだし、電子輸送現象の異方性測定を行った。Ce_2CoIn_8についてはいろいろに条件を変えて育成を試みたが、大きさ、質ともに結晶の改善に到らなかった。またいずれの試料の場合にも純良試料を得るには到らず、de Haas-van Alphen振動測定はできなかった。特に結晶に内包されてしまうInが問題であり、質の向上はInフラックス法では困難と考えられる。次年度は化学気相法など他の方法による育成を試みる。 (2)試料空間がφ4.5と試料体積が大きく静水圧性が高いクランプ式圧力セルの製作を行った。内シリンダーを非磁性超硬材料のNiCrAl合金で製作し、外径がφ22およびφ25のBeCu合金外シリンダーに圧ばめし、φ6の内径に2および3GPaの静水圧が発生できた。また大容積の微量吐出ポンプを製作し、容易に圧力が微調整できる特徴あるプレス機を完成させた。今後、量子臨界点近傍で微細に圧力を調整した測定が可能となった。 (3)希土類 遷移金属 Ga三元系物質の探査と結晶育成の結果、CeRh_2Ga,YbRh_2Gaの単結晶の合成に成功した。当初ねらいとした超伝導物質ではなかったが、CeRh_2Gaは非フェルミ液体、YbRh_2Gaは価数揺動を示す物質であるとわかった。これらの物質の電子物性については論文に取りまとめられた。
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