研究概要 |
本研究の目的は、重い電子系超伝導について、量子臨界点を境とするf電子の局在から遍歴への変化と超伝導との相関を解明することである。そのため、重い電子系超伝導体Ce_2CoIn_8および反強磁性体Ce_2RhIn_8について良質な単結晶育成条件を追求し、磁化および電気抵抗率、電流磁気効果への圧力効果測定を行った。また、新しい量子臨界点近傍物質の探査を希土類-遷移金属-Gaの3元系物質において行った。 三元系重い電子系物質Ce_2MIn_8(M=Co,Rh)について、フラックス法による結晶育成を行い、他相が混入しない育成条件を確立した。しかし、低温においてその電子物性には試料依存性が強く観測され、これらの物質が構造敏感であることが明らかとなった。典型的と考えられる試料について、整備した20tプレスおよびNiCrAl-CuBe非磁性高圧力セルを用いて、温度1.5-4.2K、磁場8T、圧力3GPaまでの複合極端条件下における電流磁気効果測定、および、温度1.5-10K、磁場5T、圧力IGPaまでの磁化測定を行った。重い電子系超伝導体Ce_2CoIn_8の非フェルミ液体的な振る舞いの圧力による増大や圧力誘起超伝導体のCe_2RhIn_8が約2GPaでCe_2CoIn_8の常圧における電子状態に近づくことなど、低温における磁性と伝導の関わった電子輸送現象について明らかにした。しかしながら、超伝導とフェルミ面の構造の相関については、試料の質を十分に上げることができず明らかにするに至らなかった。さらに良質な結晶育成の条件を結晶育成方法も含めて今後探求したい。希土類-遷移金属-Ga三元系物質の探査においては、CeRh_2GaおよびYbRh_2Gaの単結晶合成に成功した。これらの物質の電子物性について、CeRh_2Gaは非フェルミ液体、YbRh_2Gaは価数揺動を示す興味ある物質であることを明らかにした。
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