研究概要 |
CeB_6は奇妙な反強四重極秩序を示す物質として有名であり,また,典型的な高濃度近藤物質としてもよく知られている。その近藤効果については,他の近藤効果を示すCe化合物同様,非磁性のLa添加系について詳細に研究されている。しかし,Ce以外の局在スピン(Rイオン)系の磁気秩序を示す物質中での近藤効果についての研究はほとんどなされておらず,新しいタイプの多体問題が出現する可能性もある。本研究ではCe_xNd_<1-x>B_6系において種々の測定を行い,下記のような成果を得た。 (1)高温の常磁性領域での電気抵抗は,Ce_xLa_<1-x>B_6と非常によく似た振る舞いを示し,不純物近藤効果的性質がよく保存されていることがわかった。 (2)低温では2つの磁気秩序が出現する。高温側ではNdがメインな引き金として起こる磁気秩序でありそこでは電気抵抗も大きく近藤状態は壊されていないことがわかった。また,低温側の磁気秩序では電気抵抗の大きな減少も見られCeがメインである磁気秩序であることがわかった。高温側の磁気秩序相では,Ceイオンもそれに関与しているにもかかわらず,近藤状態は保たれている,という奇妙な性質をもっている。低温での磁気秩序はCe_xLa_<1-x>B_6において磁気秩序が消滅するのと同じx〜0.3で消滅する。これは,CeのまわりがLaであろうとNdであろうとCe間相互作用は影響を受けていないことを示しており,非常に奇妙な現象である。 (3)CeB_6の磁気秩序はNd添加により容易に侵食されNdメインの磁気秩序がx<0.8で出現するが,反強四重極秩序およびオクトポール相互作用はNd添加によっても大きな影響を受けず,高磁場ではしぶとく生き残っている。これは,Ndイオンが常磁性状態にあればCe間多重極子相互作用は大きな影響を受けないことを意味していると思われる。 現在,Ce_xPr_<1-x>B_6系についての研究を進めており,Ce-Rイオン間の多重極子相互作用と近藤効果についての更なる情報が得られるものと考えている。
|