研究概要 |
MgB2のトンネル分光実験では強結合ギャップ(2Δ=5-6 kBTc)を観測している.これは銅酸化物以外の超伝導体では最大であり,層状高温超伝導体Li(THF)HfNCl(Tc=26K)での値と同程度である.また,ギャップについては近接効果による「相関2ギャップモデル」で再現可能な多重ギャップ構造を持つことが分かった.この多重ギヤップの起源は2バンド超伝導であるとされているが,本研究では2つ以上のギャップを観測している.その成因をさらに詳しく探るためには純良単結晶を用いたSTMによる測定が必要である.強結合性について系統的に調べるためにTcの低い(5-9K)NbB2の測定も行い,ギャップの大きさが2Δ=4-4.5kBTcであることを明らかにした.これはMgB2での値よりも小さいがPbと同程度であり,やはり強結合超伝導体である.興味深いことに.NbB2においてもTcがほぼ同一で大きさの異なるギャップ構造が観測された.電子構造の異なる両者で似た特性を示す訳であるが,その起源については現在調べている.さらに,MgB2の超伝導機構を探るために,電子フォノン結合スペクトルの測定を行っている.それによると,約60-90meV付近のエネルギー領域に比較的再現性の高い特徴的な構造を観測している.このエネルギーは面内のB-B stretching(E2g)モードの特性エネルギーに近く,このフォノンモードが超伝導に関与していることを示唆する.しかし,他のエネルギー領域の構造も無視できず,単結晶による詳細な測定が望まれる.また,電子状態の磁場中異方性を探る為に考案作製していた磁場中トンネル分光装置用プローブも完成した.
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