研究概要 |
昨年度に引き続き、本年度もX線回折、EDX組成分析、強磁場磁化、磁気抵抗測定など十分に結晶評価、物性評価されたPr_<1-x>Ca_xMnO_3(x=0.3,0.4,0.5)の単結晶試料について、マイクロ波電磁応答測定を行い、磁場、温度依存性を精密に評価した。その結果、電荷秩序相転移が見られないx=0.3の試料では誘電異常が観測されず、x=0.4、0.5の試料はいずれも電荷秩序転移に伴う誘電異常を示すことが明らかになった。即ち、低温、ゼロ磁場で電荷整列絶縁体のマンガン酸化物が、磁場によって電荷整列状態が破れ、金属化する、という現象をマイクロ波域でも観測した初めての成果である。さらに、この金属状態をマイクロ波で見ると、高磁場中に於いても大きな誘電率と共に低い導電率をもった半導体的な温度依存性を示す、という極めて興味深い結果が得られた。これに関しては日本物理学会(9月、青森)で発表し、論文とりまとめ中である。さらに、参照物質としてコバルト酸化物の試料合成を試み、磁気抵抗測定等を行った。特に、Ca_3Co_4O_9の磁気抵抗がトンネル磁気抵抗効果で説明できることを示し、コバルトイオンが絶縁体の海に浮かぶ島状の伝導相に電荷分離しているという帰結を得た。これについては国際会議(ICNDR2004、5月、京都)および強磁場研究会(6月、筑波)、日本物理学会(9月、青森)で発表した。また、本年度、主要備品として液体窒素用のオープンデュワー、ナノボルトメータ及びパソコンを購入し、既設の測定装置に組み込んだ。なお、本研究に関し、2005年3月に博士後期課程の学生が学位を修得する運びである。
|