本研究で注目したRMnO_3結晶(R=希土類)は磁性と誘電性が交差相関を示す物質として注日を集めている。本研究では磁性と誘電性の交差相関のメカニズムの解明を日指し、一連のRMnO_3結晶を作成し、結晶軸の切り出しを行った試料に対し磁場下での誘電率、自発分極および磁化の測定を行った。その結果、GdMnO_3においてa軸方向(Pbnm)に自発分極を持つ変位型強誘電転移が存在することを見出した。この転移は磁場に対し非常に強い異方性を示し、b軸方向に8Tの磁場を印加しても自発分極が消失しないのに対し、他の軸に磁場を印加した場合0.5〜3Tで自発分極が消失することが分かった。また本研究で誘電性から得られた相図と、Hembergerらが磁性と比熱から得た相図とが良く一致することから、この強誘電転移はGdイオンのf電子の磁気モーメントに起因するものであると考えられる。 また、層状ペロブスカイト型マンガン酸化物(La_<2-2x>Sr_<1+2x>Mn_2O_7 x=0.38)における時間分解反射率変化の測定を行った。強磁性金属相における擬二次元MnO_2面内におけるキャリアのエネルギー緩和の過程を観測し、50K以下の低温において2つの成分、200ps程度で平衡に至る遅い立ち上がりの後1ns以上かけて緩和する正の反射率変化と10ps以内の高速な反射率減少の後700ps程度で完全に回復する負の応答成分が、共存することを見いだした。立ち上がりの遅い成分は金属-絶縁体相転移における振る舞いなどから金属的応答であると考えられることから、もう一方の成分は、金属的応答を示す広いホールドープ領域(0.30≦x≦0.40)で観測されている電気抵抗率測定などで報告されている50K以下の低温領域における局在キャリアの存在と関わる現象であると考えられる。
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