本研究で注目したRMnO_3結晶(R=希土類)は磁性と誘電性が強い相関を示す物質として注目を集めている。本研究では磁性と誘電性の結合のメカニズムの解明を目指し実験を行った。その結果、TbMnO_3とGdMnO_3はその強誘電転移のメカニズムが異なり、前者がMnの3dスピン系に起因した秩序-無秩序型の2次の強誘電転移なのに対し後者はGdの4fスピン系に起因した変位型の1次の強誘電転移であることを明らかにした。さらにRサイト置換により1電子バンド幅を精密に制御することでTbMnO_3とGdMnO_3の間で強誘電転移のメカニズムがどの様に移り変わっていくのかを調べた結果、これら2つの組成の間にGdMnO_3と同じα軸方向の自発分極を持ちながら、メカニズムはTbMnO_3と同様にMnの3dスピン系に起因すると考えられる強誘電相が存在することを発見した。 また、強磁性金属相を有する層状ペロブスカイト型マンガン酸化物(La_<2-2x>Sr_<1+2x>Mn_2O_7x=0.38)におけるパルスレーザー照射時の時間分解反射率変化の温度依存性を強磁性金属-常磁性絶縁体転移温度を含む温度範囲で測定した。 MnO_2伝導面内におけるキャリアのエネルギー緩和過程は、1ps程度の時定数を示す電子-格子相互作用による速い緩和過程、1ns程度の遅い緩和過程、10ps程度の緩和過程、という3成分で表されることを見出した。遅い緩和過程は連続光による光照射効果の温度依存性との比較から、光照射によるサンプルが加熱される熱的な効果であることを示した。一方、10ps程度の緩和時間を持つ緩和過程は、報告例が少ない時間スケールを持つ応答成分であり、その温度依存性からこの成分は巨大磁気抵抗効果の要因の一つとされている動的Jahn-Teller効果による短距離秩序を反映するものであることを示唆する結果が得られた。
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