研究課題/領域番号 |
15540354
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
米満 賢治 分子科学研究所, 理論分子科学研究系, 助教授 (60270823)
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研究分担者 |
岸根 順一郎 九州工業大学, 工学部, 助教授 (80290906)
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キーワード | 量子常誘電体 / 巨大誘電応答 / チタン酸化物 / 量子イジングモデル / ハロゲン架橋金属錯体 / 非線型光学応答 / 超高速緩和現象 / 光誘起相転移 |
研究概要 |
量子常誘電体SrTiO3では同位体置換や紫外光照射などで誘電率が増大する。光ドープされた電子の易動度は比較的高いことも最近観測された。格子変位と結合した電子はフォノンを引きずって動くため、通常は有効質量が重くなる。電子が巨大な誘電率増大を引き起こすこととその易動度が高いことが同一起源の物性か考察した。この現象は量子臨界点付近の巨大量子揺らぎと結合した電子の挙動が本質的である。電子がなくても同位体置換で量子誘電転移するので量子イジングモデルに結合した少数電子問題を考えた。格子変位による電子ホッピングの変調を電子-擬スピン相互作用として導入した。量子臨界点近傍の無秩序側に位置していた系が電子注入で秩序相側へシフトしうることが分かった。電子がまとう擬スピンの雲が広がっているために、その有効質量はあまり重くならない。 1次元ハロゲン架橋金属錯体(MX鎖)は、遷移金属(M)とハロゲン(X)が交互に並んだ1次元鎖物質であり、Mに依存して系の状態を大きく変えることでよく知られている。M=Niの場合はモット絶縁相となるのに対し、M=Pdの場合は電荷密度波相と呼ばれる相に属する。これらのMX鎖を光照射した際におこる電子状態変化が観測され、Ni錯体では光学伝導度に金属的低エネルギーピークが現われるのに対し、Pd錯体ではそのようなピークは現れないことが知られている。この光学応答の違いを説明するために交替ポテンシャルをもつハバードモデルを厳密対角化して、光学励起状態の光学伝度度スペクトルや時間変化を計算した。モット相においては金属的ピークに対応する明白な低エネルギーピークが現れるのに対し、電荷密度波相では極めて弱いピーク構造のみが現れ、実験と一致した。この違いは、両相における第一光学励起と第二光学励起との行列要素の大きさの違いに帰着させられ、非線形光学応答の結果とも矛盾しない。
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