研究課題
基盤研究(C)
非平衡緩和法と呼ばれる手法を用いてハイゼンベルグ型スピングラス相転移の問題を詳しく調べるのがここでの主な研究課題である。また、スピングラス相転移と低温相描像の統一的な理解のために、イジング型とXY型の模型についても同様の解析を行った。具体的な成果は以下のとおりである。1.計算手法の確立:相関長と帯磁率の両緩和関数から有限時間スケーリング解析を行う手法を確立し、解析精度の向上を達成した。人為的な解析手順に依らない最適パラメータの求め方、平均操作時におけるレプリカ数とランダムボンド配位数のとり方、ハイゼンペルグ模型における状態更新アルゴリズムの問題、等についても新たな指針を与えた。2.ハイゼンベルグ型スピングラス模型におけるスピングラス・カイラルグラス相転移の分離:二つの相転移温度の分離が出来た。高温側でカイラルグラス、そしてその少し低温でスピングラス転移が起こる。高温側で分離していたスピンとカイラリティの両自由度がスピングラス転移を境に合体していく様も明らかにした。3.動的普遍性の発見:イジング型及びXY型模型に対する同様な計算によって、3次元スピングラス模型のスピングラス及びカイラルグラスの全ての相転移において、動的臨界指数の値が一致する普遍性を発見した。空間的には無秩序であるが時間的には完全に凍結する秩序を特つのがスピングラス相転移の特徴であり、その時間方向の臨界性を特徴付ける動的臨界指数の普遍性はスピングラス相転移を理解する上で重要な発見である。4.低温相における動的クロスオーバー:低温相描像解明のために行った緩和過程の解析により、転移温度付近に特徴的な緩和過程から絶対零度において特長的な緩和過程へのクロスオーバーが低温有限温度で起こることを発見した。これは、ダイナミクスに限れば基底状態と同じ緩和が有限温度で見られることを意味する。そして、基底状態動的臨界指数の値を求めることが出来た。5.量子スピングラスへの布石:ボンド交替ランダムスピン鎖の量子相転移を明らかにし、本研究課題で用いた手法が量子スピングラスヘも応用可能であることを確認した。
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Progress of Theoretical Physics Supplement 157
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Progress of Theoretical Physics : Supplement 157
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Journal of Physics A : Math and General 36