研究課題
基盤研究(C)
古典カオス系が持つリアプノフ指数を量子力学のみからどう導出するかは量子古典対応の重要な問題であったが、近年Bhattacharya達により大きく進展させられた。彼らはCaves-Milburn型の連続測定モデル(観測強度というパラメータを持つ)を用いて連続測定効果を取入れた量子的な運動方程式を数値的に解き、古典極限(観測強度:大、プランク定数:小)で波束の軌道が古典軌道と同じリアプノフ指数を持つことを示したのである。量子力学的ユニタリ時間発展(観測強度0の極限でもある)ではリアプノフ指数が0であることを考え合わせると、彼らの結果は「連続測定による非カオス-カオス遷移」の存在を示唆する。本研究では、この遷移の存在と性質を調べた。そのために典型的なカオス系の一つであるダフィング振動子(二重井戸の中の粒子に周期的な外力がかかるもの)を採り上げ、観測強度を段階的に変えながら連続観測の元での量子的な運動方程式を数値的に解き、特に観測強度が小さい場合の波束の運動のリアプノフ指数およびストロボ図(正確には、位置演算子と運動量演算子それぞれの期待値が作る軌道のリアプノフ指数等)を求めた。その結果、波束の幅が大きい、即ち収縮が弱く系の量子性が大きく残る場合でもリアプノフ指数は0より大きい値を持ち、またストロボ図もカオス的な性質を持ちえることを見いだした。我々の結果は、リアプノフ指数で特徴付けられるカオスが量子的な運動においても存在することを強く示唆するものである
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Proceedings of the workshop Nonlinear Dynamics in Astronomy and Physics (New York Academy of Sciences) (予定)
Proceedings of the workshop Nonlinear Dynamics in Astronomy and Physics(edited by J.-R.Buchler and S.T.Gottesman)(New York Academy of Sciences) (to appear)
物性研究 82・5
ページ: 670-673
Bussei Kenkyu vol.82 no.5