研究概要 |
本年度の主な成果は4つある. 第一は,D型の幾何クリスタルに付随するトロピカルRを双線形化し,その解を離散的DKP階層のタウ関数により構成したことである. これによりソリトンセルオートマトンの古典可積分系としての位置づけを明らかにし,オートマトンの区分線形なNソリトン解を構成するための基礎を与えた. 第二は,D型オートマトンの時間発展に対し,粒子・反粒子による簡明なアルゴリズムを確立したことである.特に箱の容量が非一様の場合が容量最小の場合に本質的に帰着していることを示し,真空の自由度を任意に選んだ場合の時間発展やソリトン配置を明示的に求めた.更に,D型の場合がA型以外の全ての非例外型のKKMクリスタルに付随するオートマトンを含んでいることを示し,それまでの結果を整理統合することに成功した.以上の結果は既に論文としてまとめられ,学術雑誌に掲載が決定している. 第三は,反射壁のある箱玉系を構成したことである.これにより,可解格子模型での反射方程式を用いた構成法がソリトンオートマトンにも有効に応用できることが明らかにされた. 第四はソリトンセルオートマトンの可積分量子化を得たことである.前者は後者のパラメーターqを0とおいた極限に相当する.可解頂点模型がそのような量子可積分系であることば認識されていたが,これに関して特にキャリアの容量が無限大の極限での統計重率の計算に成功し,粒子が非決定論的に遷移する振幅を因子化した演算子により簡潔に記述した.
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