研究課題/領域番号 |
15540364
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
数理物理・物性基礎
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
初貝 安弘 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教授 (80218495)
|
研究分担者 |
守田 佳史 群馬大学, 工学部共通講座物理学教室, 助教授 (10292898)
笠 真生 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (90376492)
|
研究期間 (年度) |
2003 – 2004
|
キーワード | トポロジカル秩序 / 異方的超伝導 / 炭素2次元系 / エッジ状態 / 量子液体 / 位相不変量 / 量子ホール効果 / 量子エンタングルメント |
研究概要 |
近年の物性論における重要な進展として量子力学的運動に必然的に付帯する波動関数の位相の重要性がある。なかでも物理系の幾何学的構造に起因するものは幾何学的位相とよばれる。本研究ではこの幾何学的位相に基づく物理系の相分類にいたることを究極の目標とするトポロジカル秩序の概念を深めるための種々の研究を行った。 (1)異方的超伝導相に関するトポロジカル秩序の総括的研究を完成させた。 (2)d-波の対称性性を持つ2次元超伝導とカーボンシート系とを理論的に完全に対応させ特に系の境界に存在する「局所的時間反転対称性の破れ」と「局所磁化」とを1次元的エッジ状態バンドのバイエルス不安定性として記述し理論を完成させた。 (3)低次元量子系においては量子ゆらぎが通常の秩序形成を妨げ現代物理の基礎概念の一つである局所秩序変数による対称性の破れによっては特徴づけられず、非局所的な観測量でのみ系が特徴づけられうる量子液体相がいくつもあり多くの理論的興味をもたれている。この「量子液体」に対して「トポロジカル秩序を用いた相分類」に対する基礎理論を完成させた。これは秩序変数によらずに量子力学的多体状態をその波動関数のいわばentanglementの様子から「相」として特徴づけようとする試みである。いかなる対称性も破らないが多くの異なる相が存在する量子ホール状態がその典型例である。特に一般の多粒子量子液体相の特徴付けに対してトポロジカル秩序の概念から多体波動関数のentanglementを反映するものとして一般化されたBerry位相としての幾何学的位相を用いた「位相不変量」を用いた相分類の一般論を与えた。これは、2方向への境界条件のひねり演算子を外部摂動とした波動関数の位相変化とみるとわかりやすいが、2次元における位相不変量が不連続量たる整数しか取り得ないというトポロジカル安定性からLieb-Schultz-Mattis以来の1パラメターひねりにはない大きな有効性が発揮され「量子液体の分類」という物性理論において重要な問題に対して極めて有望な観点を与えるのである。
|