研究概要 |
1次元保存系のスピノーダル分解は,実験的な困難さ故に定量的な研究が行われていなかった。そこで,本研究では,ネマチック液晶のzigzag不安定性を利用して1次元保存系のスピノーダル分解に関する実験を行い,基礎的な知見を得ることを目的とした。 1 液晶のzigzag状の配向壁の角度が正の場合に1,負の場合に1をとるIsing秩序変数を定義し,この系の特徴的な長さであるIsingドメインの平均の大きさの時間発展を計測した。特徴的な長さは時間の対数に比例して増大し,理論で予測されている結果と一致した。 2 秩序変数の空間相関関数,そのフーリエ変換である構造関数,ドメインのサイズ分布関数を計測した。また,kinkの位置からkink-kink間の密度相関関数を計測した。これらの関数を特徴的な長さのスケールである平均のzigzag間距離でスケールすると,各時刻の実験データが一つのユニバーサルな曲線上にのり,この系の時間発展に動的スケール則があることが分かった。 3 消滅するzigzag対の距離の変化を観測したところ,対消滅の過程では,zigzagの頂点間に指数関数的な引力相互作用が存在することが推察された。 4 実験に対応する計算機シミュレーションを行い実験結果と比較した。シミュレーションにおいても特徴的な長さの対数的時間発展が存在することが分かった。また,相関関数のスケーリングを調べたところ,スケーリング領域に入る以前から,特徴的な長さのスケールは対数的時間発展を示すことが明らかになった。
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