研究概要 |
1次元保存系のスピノーダル分解は,実験的な困難さ故に定量的な研究が行われていなかった。本研究では,ネマチック液晶のzigzag不安定性を利用して1次元保存系のスピノーダル分解に関する実験を行い,以下の基礎的な知見を得た。 1.Isingドメインの平均の大きさの時間発展を計測した。特徴的な長さは時間の対数に比例して増大し,理論で予測されている結果と一致した。 2.秩序変数の空間相関関数,構造関数,ドメインのサイズ分布関数,kinkの位置からkink-kink間の密度相関関数を計測した。スケーリング解析により,粗視化過程に動的スケール則があることが分かった。 3.実験に対応する計算機シミュレーションを行い実験結果と比較した。シミュレーションにおいても特徴的な長さの対数的時間発展が存在することが分かった。 4.初期過程において配向壁の形を画像処理によって解析した。ある空間モードが指数関数的に増加し,やがてそのモードが飽和すると配向壁の形はzigzag状になった。基本モードの指数関数的成長は,従来の3次元系のスピノーダル分解の特徴と同じであった。そして,配向壁の運動方程式を基にして,この指数関数的成長を理論的に説明した。 5.実験では,配向壁の初期揺らぎを制御することはできない。そこで,実験系に対応するモデルを用いて,様々な初期分布を用いてその後の時間発展を計算するシミュレーションを行った。その結果,後期過程のzigzagの分布は,初期分布に影響することが明らかになった。 6.2時間相関関数のベキ指数を実験によって求めた結果,約2であることがわかった。実験では,多くのデータを取ってこの指数を求めることが困難であるので,シミュレーションを行った。その結果,このベキ指数は,時間の基準の選び方に依存することがわかった。
|