研究概要 |
平成17年度は、液体炭素および液体Ge-Si混合系の静的・動的構造と電子状態を調べるため、第一原理分子動力学シミュレーションを実行した。 液体炭素は、炭素原子がsp、sp^2、sp^3の3種の共有結合を作ることから、構造および電子状態の圧力(密度)依存性が大きいことが予想される。天体の内部などでは高温・高圧下の液体炭素が実現している可能性が高いが、実験的に調べるのは、現在の高圧技術ではかなり困難であるので、第一原理分子動力学シミュレーションによる研究の意義が大きい。我々は、9000Kという高温で、16万気圧〜2000万気圧の超高圧までの広い圧力領域での第一原子分子動力学シミュレーションを実行し、超高圧までの静的構造の密度変化を調べ、次の点を明らかにした。(1)液体カーボンは、圧力増加に伴って、平均配位数が3から8に大きく変化し、そのことが数百万気圧での融点極大に関係していること、また、(2)超高圧下での構造は常圧下での液体Ge,Siの構造と類似していることを、超高圧下でのシミュレーションで得られた構造因子と常圧下での実験結果の比較から明らかにした。 さらに、周期律表で炭素と同族のSiとGeからなる液体Ge-Si混合系の構造や結合状態の温度・組成依存性について、第一原理分子動力学シミュレーションにより調べた。SiとGeは結晶ではいずれもダイヤモンド構造を形成するが、結合ボンドの強さは、Siの方がGeより強いので、その影響が液体Ge-Si混合系の構造や結合状態に現れることを、シミュレーション結果の定量的な解析により明らかにした。 これらの研究成果は日本物理学会およびオランダで開催されたLiquid Matter Conference 2005(Utrecht)において発表し、J.Phys.Soc.Jpn(2005年7月)に論文を掲載するとともに、現在論文を投稿準備中である。
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