研究概要 |
1.内部振動の自由度をもつ1次元格子振動系,さらには,回転自由度をもつ2次元力学系を考え,系のエルゴード性と混合性が内部自由度の存在によっていかに影響を受けるか,という問題を調べた.この結果,内部自由度があるハミルトン系では,モデルの詳細にあまりよらず適当な条件下では,遅い緩和が現れ得ること,とくに,モードエネルギーのパワースペクトルにベキ的成分が現れることが確認された.これは,ハミルトン系における摂動論を用いた予言(Boltzmann-Jeans予想)を支持する結果である. 2.剛体球モデルで見られる遅い緩和の起源を,ハミルトン力学系の遅い緩和の問題としてどのように理解すべきか?という視点から,2次元,および3次元剛体球モデルのシミュレーションを行った.とくに,系に存在する2種類の周期軌道,すなわち,(1)平行な辺で反射を繰り返す,いわゆるball bouncing mode,(2)2つの球がすれ違うボトルネックに存在する周期軌道,が緩和過程にいかなる影響を及ぼすかについて検討した。その結果,前者については,位相空間に占めるbouncing ball modeの次元が剛体球の数が増大すると共に相対的に低くなることからその影響力が小さくなることを明らかにし,また,後者については,緩和の速度を遅らせる効果はあるものの,緩和の関数型を指数関数的なものからずらす効果はないことを見出した。
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