研究概要 |
1分子レベルから分子集合体のレベルへ階層のステップアップを図る目的で、界面活性剤(AOT),BZ反応液,油(オクタン)からなるwater-in-oil型のマイクロエマルジョンを構築し、これを自律機能を内包する要素とした。温度,液滴のイオン強度,液滴の組成比、滴の体積分率、等を通じて液滴の大きさや形態を制御した。これによって活性因子(亜臭素酸)と抑制因子(臭素イオン)の拡散速度に差を生じせしめ、生体の形態形成のような自己制御・発展するドメイン構造を持つパターンの誘起を試みた。BZ反応組成を高酸化状態にし、基質として従来のマロン酸の替わりにシクロヘキサンジオンを用いることで、臭素化による反応の劣化を防いだ。その結果、反応が飛躍的に持続し、隣り合うクラスター内の波が互いに反位相になる波(クラスター波)、周期が急激に変化する波、対消滅しない波、等多様なパターンが観測された。 BZ反応を基本にした自律型微小ゲルを要素とする興奮性結合系を構築し、ノイズ誘起自己組織化現象に与える階層化の効果を調べた。要素の1次元配列では、(1)要素数の増加と共にノイズ誘起振動のコヒーレンス度が促進される、(2)直接的な相互作用のない離れた要素間の位相同期は、それらの間に挟まれた要素の不規則振動を媒介にして達せられる、(3)位相同期現象の生起には、コヒーレンス共鳴が介在する、等、興味ある結果を得た。更に、数値シミュレーションに向けて実験系のモデル化を行い、外場効果を考慮できるように修正したオレゴネータモデルを用いて観測結果を再現した。更なる階層化に向けて、フォトリソグラフィーを用いて10×10の興奮性要素の2次元配列を構築した。この方法は、要素の大きさ、配置、数が自在に制御できる利点を持っている。予備実験で、多要素化がもたらす新奇な自己組織化が観測された。
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