研究概要 |
本研究では異なる到達距離を持つ相互作用が競合するANNNIモデルおよび第3隣接間相互作用まで考慮したA3NNIモデルをスピン量子数S=1へ拡張した場合に重要となる高次のスピン間相互作用をも含めた拡張モデルを対象に、モンテカルロシミュレーション(MC)および解析的手法を用いて、競合系における高次のスピン間相互作用とスピン量子数の果たす役割とその重要性を理論的に解明した. 1)拡張A3NNIモデル UNi_2Si_2において報告されている波数k=1/3変調構造から反強磁性構造への相転移を説明するモデルとして、高次のスピン間相互作用を持つ競合スピン系を提案した.MCにより変調構造のフーリエ係数等の温度依存性を数値計算することにより、波数k=1/3変調構造から反強磁性構造への相転移が起こることを示した. 2)薄膜上のANNNIモデル 積層正方格子上において競合する次隣接相互作用として3サイト4スピン相互作用を採用したS=1ANNNIモデルに対してMCの結果は磁気相図上での強磁性相の拡大および4本の相転移線が1点に収束する点の存在を示唆している.さらに比熱の解析より4本の相転移線は2次相転移でありことから4重臨界点の存在を示唆する結果が得られた. 3)相互作用交代型ANNNIモデル このモデルの秩序状態の1つとして部分無秩序状態が出現することが明らかにされている。この部分無秩序状態への相転移に関する性質を明らかにするため、これを非平衡緩和法を用いたMCにより調べ、転移温度・臨界指数を精度よく決定した.有限サイズスケーリングに基づき,転移温度・臨界指数を精度良く決定した.このモデルにおいては通常のユニバーサリティは見られず,ウィークユニバーサリティの成立を示唆する結果が得られた.
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