研究概要 |
(1)基底状態でTd点群に属する正四面体分子CF_4やO_h点群に属する正八面体分子SF_6のF1s電子を最低非占有分子軌道(LUMO)に励起すると、対称性を破る核の運動が引きおこされことが推測される。本研究では、共鳴オージェスペクトルの中にF原子フラグメントからのオージェ電子放出を観測し、そのドップラーエネルギーシフトから、CF_4の場合C-F結合が一本、SF_6の場合S-F結合が一本、励起光偏光軸方向に伸びるようにして解離が進行することを明らかにした[Phys.Rev.Lett.90,233006(2003);Phys-Rev.Lett.91,213003(2003)]。実験は、SPring-8の高分解能電子分光装置を用いて共同利用実験として行った。 (2)D_<3h>点群に属する正三角形四原子分子BF_3のF1s電子を光イオン化すると非対称振動が内殻イオン化状態で引きおこされる。このイオンの振動はF1s正孔寿命広がりのため、Fls光電子分光では測されない。本研究では、F1sイオン化に続いて、多重オージェ過程が起こり、クーロン爆発によりB^+,F^+,F^+,F^+の4個の解離イオンが生じるチャンネルに注目し、全てのイオンの運動量を同時測ることにより、BF_3分子内殻励起状態でB-F結合が偏光軸方向に一本伸びて解離が進行する様子をえることに成功した[Phys. Rev.A69,022506(2004)]。実験は、現有の多重イオン同時計測運動分析装置を用いてSPring-8の共同利用実験として行った。 (3)SPring-8の高分解能電子分光装置に組み込むことのできる反跳イオン運動量分析器を設計し、当研究所の付属機械工場で製作した。現在、実験室で動作テストを行っている。16年度にこの装置をSPring-8に持ち込み、高分解能電子分光装置と組み合わせて、CF_4やSF_6分子を対象として、共鳴オージェ電子-反跳イオン同時計測実験を行う。
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