研究概要 |
1.CF_4、CH3F, SF_6のF 1s電子を最低非占有分子軌道(LUMO)に励起した時に観測される共鳴オージェスペクトルの中にF原子フラグメントからのオージェ電子放出を観測し、そのドップラーエネルギーシフトから、C-F結合またはS-F結合が一本、励起光偏光軸方向に伸びるようにして超高速解離が進行することを明らかにした。 2.半球静電偏向型電子エネルギー分析器(GAMMADATA-SCIENTA社SES2002)の電子検出部のCCDカメラをディレーライン型位置検出器に置き換え、東北大学当研究所付属工場で製作した飛行時間型イオン運動量分析計と組み合わせ、オージェ電子・イオン同時計測装置を製作した。 3.本同時計測装置を用いて、CF_4、CH_3F、SF_6等の分子の内殻励起状態における超高速分子解離と共鳴オージェ電子放出との競争について詳細に調べて以下の知見を得た。 (1)いずれの分子のF 1s励起後の分子解離でも、Fイオンが得る解離運動エネルギーは余剰エネルギーの半分以下であり、残りのエネルギーは他のフラグメントの振動励起や解離に用いられる。 (2)CH_3F分子のC 1s励起の場合も超高速分子解離が起こり、CHイオン生成が促進される。 (3)CF_4分子のF 1s励起におけるFイオンとF原子からのオージェ電子との同時計測信号から、オージェ電子の分子内散乱、つまりF原子から放出されたオージェ電子がCF_3フラグメントによって散乱される現象を捕らえた。 (4)CH_3F分子のF 1s励起におけるCH_2イオンとF原子からのオージェ電子との同時計測信号から、解離分子内電荷移動、つまり、F 1sオージェ緩和の際に離れつつあるCF_3フラグメントから電子が引き抜かれる現象を捉えた。 1および3の実験は、放射光実験施設SPring-8の共同利用実験として行った。
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