研究課題
1)低い角運動量状態にある反陽子水素は、陽子と反陽子が近づいて粒子・反粒子消滅を起こしてしまう。反陽子と原子分子との衝突で反陽子水素が生成される場合、非常に高い角運動量状態ができるので、消滅に対しては実質的に安定になる。しかし、第三体による衝突がさらに起き、低い角運動量が混ざると、粒子・反粒子消滅が起きてしまう。このため、第三体衝突(密度効果)は生成反陽子水素の生存に重大な影響を及ぼすことになる。そこで、衝突過程と消滅過程を同等に扱う手法を開発し、この問題を論じた。この結果はアイルランドで開催された国際会議EGASで発表した。2)以前行った反陽子と水素原子衝突での反陽子水素原子生成過程の計算では生成反陽子水素の状態を識別することができなかった。これを可能にするためには、出口側チャネルである電子と反陽子水素原子衝突の計算を行う必要がある。本年度はこれを可能にする波束伝搬による量子力学的計算方法を開発した。また、この衝突過程で電子を陽電子に置き換えても、電子の場合の計算結果がそのまま利用できる。陽電子衝突では反陽子水素原子生成が可能になるのでこれは興味ある問題である。3)反陽子とヘリウムイオンの低エネルギー衝突による反陽子捕獲断面積の波束伝搬による量子力学的計算を行った。この衝突系では断熱(Born Oppenheinmer)近似が大体において有効であることがわかった。しかし、非断熱遷移が全く起こらないわけではない。その断熱性の破れにより反陽子がヘリウムに捕獲される反応が起きる。また、この捕獲過程において、共鳴散乱が非常に重要であることがわかった。この共鳴状態を解析すべく量子欠損理論やR行列法による計算を行っている。さらに、半古典近似を用いて中間エネルギー領域における電離過程の研究も行った。エネルギーをkeV位から下げていくと電離断面積は一旦減少するが、クーロン引力が働くため低エネルギーで再び増加することがわかった。
すべて 2005
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Phys.Rev.A 71
ページ: 062704
J, Phys.B : At.Mol.Opt.Phys. 38
ページ: 3447-3460