研究課題
高等植物と藻類においては、光化学系IとIIが直列に結合し酸素発生型光合成が行われる。ここでは系IIの存在が最も特徴的である。ここでは、反応中心(RC)が、太陽光捕獲により得られたアンテナ系色素励起エネルギーを捕獲し、そのエネルギーを利用して、水から電子を引き抜きその電子を系Iに渡す。水は非常に安定な物質であるため、非常に高い酸化還元電位を持つ物質を生成しなければ、水から電子を引き抜くことはできない。実際、系II RCにおける中心クロロフィル対励起状態の酸化還元電位は2.3Vもある。ところが、系Iと光合成細菌の系においては、RCの中心色素対励起状態の酸化還元電位は約0.5Vに過ぎない。系IIのこのような色素エネルギー特異性は、RCの立体構造を目で見ただけでは分からない。系Iと光合成細菌の系においては、RCにおける中心色素対は周りのアンテナ系色素励起エネルギーを捕獲するため、励起エネルギーは十分低い。励起状態が高い酸化還元電位を持つと、励起エネルギーも必然的高くならざるを得ない。そのため、系II RCにおける中心色素対は、励起エネルギーが高くなってしまい、周りのアンテナ系色素励起エネルギーを有効に捕獲することが出来なくなっている。そこでは、高い励起状態が虚の中間状態となって励起エネルギー捕獲を仲介していなければならない。この機構を住が開発した中間分子媒介電子および励起移動速度に関する統一理論を使って明らかにした。光が強いなどの原因によってRCにおいて電子の流れが滞ると、RCに捕らえられた励起がスピン3重項励起に緩和する。3重項励起は酸素分子を有害なスピン1重項(即ち、活性)に変化させるため、3重項励起を消す機構が生体系に備わっている。緑色植物と藻類の系IIにおいて3重項励起が出来る機構およびそれを消す機構を初めて解明した。
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J.Photochem.Photobiol.A, Chem 178
ページ: 271-280
Chem.Phys. (In press)
Sci.Tech.Adv.Materials (In press)