研究概要 |
皮膚角質層中の細胞間脂質は水分保持,薬物の経皮吸収,バリアー機能などにおいて重要な役割を果たしていると言われている,しかし,細胞間脂質がつくる構造についての研究は少なく,解明されていない点が多い.時には,誤った推測に基づく構造モデルによって機能が論じられていることも多々ある.このような状況下にあって皮膚角質層中で細胞間脂質が集まって形成する多重ラメラ構造を解析し,分子レベルで構造を明らかにした構造に基づいて外界から働きかけによって起こる細胞間脂質ラメラ構造における機能制御機構を解明することを目標に研究を行った. ヘアレスマウス角質層中の細胞間脂質ラメラ構造の水分量依存性のX線回折実験を行った.皮膚科学の分野の研究で,グリセロールを上皮表面に作用させると,表面からの水蒸散量が抑えられることが分かっている.その機構を分子レベルで明らかにするために,グリセロール処理した角質層に対して実験を行った.特に,約6nmのラメラ構造のスウェリング効果に着目し,この水分量依存性を詳しく調べた,しかし,約6nmのラメラ構造のX線回折像はブロードで精密な解析が難しい.この実験を進めるに当って,この反射が強く,鋭い強度を示す条件を明らかにすることが重要であるという結論に到達した. さらに細胞間脂質ラメラ構造のX線回折実験において,単一のコレステロール結晶による回折像がしばしば観測される.コレステロール濃度の高い領域が機能において重要な役割を果たしているのかもしれない.細胞間脂質内におけるコレステロールの析出条件を探るために,高温で角層を処理する方法を試みた.その一環として室温から120℃までの温度領域で示差走査熱量測定を行った. 経皮吸収は細胞間脂質を分子が通り抜けて生じると考えられている.上皮の外側から経皮吸収において重要な役割を果たしていると言われている各種分子を作用させ,それによる細胞間脂質ラメラ構造変化の調べた.先ずはじめに,経皮吸収促進剤であるテルペンのラメラ構造への効果のX線回折測定をはじめた.
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