研究概要 |
弾性波伝播媒体としての固体地球の構造の解明は,地震学的にも,また地球の発展史を考える上でも重要な研究課題である.平成15年度は,固体地球の不均質構造解析を目的として,地震学的手法に基づく以下の3つの研究を実施した. (a)高周波数(1-30Hz)S波のエンベロープ解析に基づくリソスフェアの短波長不均質構造の推定:輻射伝達方程式を改良し,直達波のみならずコーダ波部分までを含む全エンベロープの理論合成に取り組んだ.特に2次元ランダム構造における波動場のエンベロープ形成のためのハイブリッドモデルの構築に成功した[Saito et al.,2003;Sato et al.2004].また,超音波が岩石中を伝播する際の変調過程を岩石の粒度によって分類することに成功した[Fukushima et al.,2003]. (b)中周期(1・20s)遠地地震のS波のエンベロープ解析に基づくマントルにおける散乱特性の推定:世界中に配置されたIRISの観測網によって記録された遠地地震波波形,特にScS相の着信前後でのコーダ形状の解析から,マントル中での散乱の強さの測定に成功した[Lee et al.2003]. (c)地球を周回する長周期(100・200s)レーリー波のエンベロープ解析に基づく長波長の散乱特性の推定:IRISならびにF-netによって記録された大地震の上下動地震波形記録をアレイ解析し,そのエンベロープ形状の特徴ならびに波群の構成要素を明らかにすることに成功した[IUGG・札幌大会にて発表].
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