研究概要 |
東北日本弧の火山フロント近傍に発生する地殻深部低周波地震発生域の中から,第2年度(平成16年度)には焼石連峰駒ケ岳付近を通る東西測線を選んだ.秋田県増田町と岩手県住田町を結ぶ長さ約75kmの測線上の14点において,広帯域MT法探査を実施した.この測線に近い国土地理院水沢測地観測所江刺観測場のMT連続観測のデータを,ほかの観測点のリモートリファレンス処理の参照データとして使う一方,測線上の一観測点として後の解析に用いた.観測にはフェニックス・ジオフィジックス社製MTU-5を2台用いた.北上低地および,江刺市内で人工ノイズにより,0.1〜10Hzで信号対ノイズ比(S/N)が悪かったが,ほかはおおむね良好なデータが得られている.解析は300〜0.00055Hzの帯域について行われた.G-B decompositionの結果から,N22°Eを走向方向としてTMとTEの二つのモードに分解した.両モードの10Hz以下のデータを入力として,2次元インバージョンにより比抵抗構造を推定した.得られた比抵抗分布の特徴は以下のとおりである.(1)上部地殻:奥羽山地は高比抵抗であるが,焼石岳の下深さ15kmに低比抵抗域がある.この低比抵抗域から西に向かって浅くなる低比抵抗帯にそって,1970年秋田県南東部の地震(M6.2)の余震域がある.北上低地(西縁が火山フロント付近)の下には比抵抗が非常に低い層がある.北上山地は表層からおおむね高比抵抗である.(2)下部地殻:北上低地の下は低比抵抗である.北上山地および奥羽山地の下は高比抵抗域となっているが,北上低地下の低比抵抗域から西に向かって斜めに上昇する低比抵抗帯がみられる.この低比抵抗帯は焼石岳下の低比抵抗域へと連なり,モホ近辺から火山下へのマグマ供給路とも見える.火山フロント近傍にある地殻深部低周波地震は,この低比抵抗帯にある.
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