研究概要 |
高分解能で詳細な震源過程を明らかにするためには,詳細過程が反映されている高周波の地震動を解析しなければならない.高周波の地震動には地下構造の微細な部分が影響してくるので,現実的な三次元地下構造において計算された三次元グリーン関数を用いて解析を行わなければならないことを,これは意味する.本研究では三次元グリーン関数を用いた震源過程の高分解能解析手法を開発し,それらを国内の大きな地震の観測記録に適用することを目的にしている 平成15年度は高分解能解析手法の検証のため,1995年兵庫県南部地震を対象に,Afnimar et al.(2002)による構造を用いて強震動と地殻変動のグリーン関数をボクセル型有限要素法(Koketsu et al.,2004)により計算した.地殻変動の計算結果を見ると,震源に近い観測点では変動方向の違いが見られ,堆積層上の観測点では三次元構造の影響で変動量が大きくなっているが,全体的に見れば構造による違いは小さい.一方,強震動の波形,特に堆積層上の観測点の波形では,三次元構造による影響が非常に大きい.堆積層により表面波など大きな振幅のコーダが現れるとともに,S波の到着が遅れるなど顕著な違いが目立つ.こうした3次元構造のグリーン関数を用いて兵庫県南部地震の震源過程のインバージョンを実行し,すべり分布をYoshida et al.(1996)の結果と比較した.グリーン関数の変化が大きい強震動記録によるインバージョンでは,そのすべり分布がYoshida et al.(1996)の結果からかなり変化する.淡路島側ではすべりが野島断層付近の浅い部分に集中する一方,神戸側では破壊開始点付近および神戸市街地直下のアスペリティの比重が逆転し,市街地直下の方が大きなすべりとなった. 16年度はこの手法を最近の国内の地震などに適用する予定なので,今年度は一次元構造や半無限構造のグリーン関数を用いたこれら地震の予備的解析も併せておこなった(Hikima and Koketsu,2003; Koketsu et al.,2004; Umutlu et al.,2004)
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