本年度は連続観測に向けて、1)設置場所の選定のための臨時観測と、2)連続リアルタイム観測に向けてのネットワーク装置の開発を行った。防災科学技術研究所が管理する広帯域地震計観測点の菅野(山梨県)、中伊豆(静岡県)と、地震研究所の筑波地震観測所(茨城県)と、鋸山地殻変動観測所(千葉県)で臨時観測を実施した。臨時観測点の成績を比較すると、菅野、中伊豆、筑波、鋸山の順に圧力記録中のノイズが増えていた。平成15年9月26日に発生した十勝沖地震の地震動に伴う明瞭な気圧変動を観測した。広帯域地震計上下動記録と比較すると、地震のP波到達と共に気圧変動が始まり、振幅約1パスカルの最大変動は表面波(レイリー波)の到達と同時であった。周波数応答を調べると、すべての観測点で圧力変動と地動上下動の速度成分と周期50秒以下で同一位相であること、即ち地面が正の速度で上昇すると気圧が大きくなっている。気圧変動量と上下動速度の関係は、(気圧変化量)=(大気密度)X(地面上下動速度)X(大気中音速)であることがわかった。50秒より長周期側では大気圧ノイズが大きくなり地動と大気圧変動の明確な応答特性を得られなかった。同一地点の微気圧データと地動変位データをつきあわせることで、地震動により長周期音波が発生する「現場」を目の当たりにすることができた。すなわち長周期音波は振動する地面がスピーカーとなって放出されている。これまで、地震時動により発生する音波の観測例はあったが、地震動と圧力データを同一地点で計測した例はなかった。このように放出された音波は大気中を伝播し高層にある電離層まで、エネルギー保存のため、振幅を増大させながら到達する。過去いくつかの研究で報告されている地震にともなう電離層擾乱もこのように地表で発生した圧力変動に起因していると推定される。
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