研究概要 |
本研究の目的は,地球惑星流体核の渦拡散率を見積もり,モデル化するために,MHD乱流の直接数値計算を実施し,その計算結果を利用して渦拡散テンソルをモデル化することである.現実の流体核の分子拡散率に対応するような数値計算を実施するためには,非常に小規模な場に対する解像度が要求される.したがって,計算領域を分割し,大容量メモリを持つ高速並列計算システムの各CPUに分割された領域を割り当てることによって並列計算を実施した.前年度の研究で得られた成果をフランスのToulouseで開催された第10回IAGA(International Association of Geomagnetism and Aeronomy)科学集会で発表した.本研究に密接に関係する地球ダイナモに関するセッションが2日半も開催され,本研究の内容も含めた議論をすることができた.スケール相似則及び空間フィルタ幅依存性に基づいて,サブグリッド・スケール(SGS)成分のグリッド・スケール成分への影響を表す項に対するモデルを改良した.このSGSモデルの妥当性を検証するために,MHD乱流に対してモデルを取り入れたラージ・エディ・シミュレーションの結果と直接数値計算(DNS)の結果を比較した.時間的・空間的に平均された熱流束,運動エネルギーそして磁気エネルギーは,SGSモデルを取り入れることによって,数値計算における空間解像度が低くてもDNSの結果に近づくことがわかった.ただし,速度場,磁場,温度のパワースペクトルには大きな違いは認められなかった.つまり,本研究のパラメータ範囲では,SGSモデルを含めるか否かに関係なく,空間構造の特徴は表現できていることがわかった.
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