研究概要 |
高密度地震波アレイ・データの解析を行ない,マントル遷移層,特に上部下部マントル境界近傍,での沈み込む海洋プレート内部あるいはその周辺の〜10kmスケールの小規模な不均質構造の系統的検出を試みた。具体的成果は以下の通りである。 日本と合州国西海岸の高密度地震計アレイ・データに,標準的なスラント・スタック法,位相重み付き重合法、及び申請者により開発された深発地震群を震源アレイとして扱う重合センブランス法と分散センブランス法を適用し,不均質構造体のマッピングを組織的に行なった。 マリアナ北部下部マントル最上部の深さ700km〜900kmに小規模不均質を発見した。それらが地震波トモグラフィーから見出された地震波高速度域と良く対応し、かつての海洋地殻である可能性を示唆した.その結果をふまえ,最近のマントル遷移層におけるかつての海洋地殻成分についての物質科学的研究の進展をまとめた。 また、解析対象となる地域を,北西太平洋(伊豆・ボニン,マリアナ,千島),トンガ・フィジー,インドネシア,南米にひろげて、下部マントルの最上部から中部を系統的に探査した。その結果、上記各地の下部マントル中部に小規模な不均質構造を見出した。 インドネシアの下のマントルについてマントル遷移層の底部,つまり海洋地殻の選択的滞留の候補地としての下部マントル最上部の平均的一次元速度構造の速度勾配の研究を行った結果、海洋地殻の存在する背景のマントル構造が大きい速度勾配に特徴付けられることを見出した。 これらの作業と並行して,アレイ波形のより詳細な解釈の可能性を探る目的で、重合された地震波形の差分法及びKirchhoff法によるモデリングを実施した。
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