研究概要 |
伊豆大島での人工地震からの地震波到着時間を再検討し,地震に伴った地震波速度変化量を正確に推定した。それらから,海洋潮汐の加重による成分と,応力蓄積による経年変化成分を取り除くことで,地震に伴った成分のみを抽出した。以前の解析では,地震に伴ったステップ状の変化を考慮しないで全体的傾向から議論していたが,3成分を考慮することで正確な値を得た。さらに,伊豆半島東方沖地震に伴った観測地域における地殻内応力変化を,これまでに得られている断層パラメータを利用して計算した。これら両者の値を利用することで,地震波速度の応力依存性を推定した。ただし,3成分間で大きな差があった。原因の一つは測定誤差によるが,変動の周波数による差が現れている可能性がある。 これまでに報告されている地震波速度の応力依存性と今回得られた値を比較した。まず応力依存性の測線長「依存性」を調べた。大島のデータを除く測線長が10kmより短い領域では,測線長が長くなると応力依存性が大きくなることが分かった。応力依存性はおおよそ測線長の2/3乗に比例して増加している。また,同様の測線長依存性の傾向が電気伝導度の応力依存性にも見られることも分かった。これらは,測線が長くなるほどその間に大きな欠陥を持ちやすくなるからと解釈した。一方測線長が10km以上になると,この傾向からはずれて応力依存性は小さくなる。このずれは測線が長くなるほど顕著になる。これは応力依存性が深さとともに小さくなっていることを意味している。応力依存性が大きい部分は地表付近の最大数kmと考えられ,その値は1/MPaのオーダーであると推定される。
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