研究概要 |
地球中心核(内核)がマントルや地殻に対して速く自転する,差動回転があるとの報告がある.本研究では,内核に不均質な異方性速度構造が存在するとして,その構造の時間的変化を追跡することにより,内核差動回転の可能性を検討した.もしも不均質構造の内核が差動回転するならば,地球構造が時間的に変化するのであるから,内核構造を反映する自由振動のスプリッティング関数も同様な時間的変化をすると考えられる.従って,内核構造に敏感なコアモードのスペクトルからスプリッティング関数を推定できれば,その時間変化を調べることで内核差動回転速度を見積もることができる.そのためには,スペクトルの逆解析を行う際に,地震の震源メカニズムがスプリッティング関数に及ぼす影響を押さえ込む必要がある.そこで,この要求を満たす逆解析法を開発し,これを観測した地球自由振動スペクトルに適用して正しいスプリッティング関数の推定を可能にした.また,その方法の有効性を数値実験によって確認した.開発した逆解析法を8個の巨大地震が励起した7個のコアモードの解析に適用した.これらの地震は1994年から2003年の間に発生したものである.観測した地球自由振動のスペクトルから,対象としたコアモードのスプリティング関数を地震毎に推定し,その時間的変化から,内核差動回転速度を見積もった.7個のコアモードについて得られた差動回転速度の平均値は西向きに0.033±0.18°/年と見積もった.同様の解析をマントルモードについて行うと,マントル構造の時間変化速度は西向きに0.012±0,075°/年であり,コアモードから推定した内核差動回転速度の推定値はマントル構造の時間変化とほとんど変わらないことが判明した.このことは内核の差動回転は存在しないことを示唆しており,自由振動から見ると,内核はマントルに重力的に閉じ込められていると考えられる.
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