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月における氷の存在は過去の米国の月探査によりかなり高い可能性で考えられており、ルナプロスペクタの観測では、極域のクレータ内の永久影の領域に60億トンとも推定される大量の氷の存在を示すデータが報告された。しかし、月の軌道上からの遠隔探査は間接的な観測が主であり、また分解能が低いなど、将来の月利用のためには直接的観測が必要とされている。そこで月面および惑星表面探査手法として、遠隔SIMSを用いた探査法を考案し、その可能性評価のために本研究を行っている。本手法はイオン銃と質量分析計を搭載した着陸機を用い、イオン銃から月惑星表面を照射し、発生した二次イオンを質量分析する手法である。本手法により極めて高い検出感度で月惑星表面に存在する元素分析を行うことができると考えている。
昨年度の研究により、イオンガン、四重極型質量分析計および真空装置を整備し、月面永久影内を模擬するための低温ターゲットを試作、氷の質量スペクトル測定に成功した。
本年度は、より月面環境を模擬した条件での2次イオン生成を評価するため、多孔質セラミックを用いた冷却ターゲットを試作し真空化で含水を維持し水の質量スペクトルの取得に成功した。本ターゲットを用い、イオンガンから発生するイオンビームのパラメータを変化させた際の二次イオン発生量を測定した。2次イオンの生成量は、イオンビームのエネルギーに依存し、500〜700Vで増加が少なくなり、プラトー領域が観測された。一方、一次イオンのビーム量に関しても、今回の実験条件では数ミリAで最大値をとり、最大値はイオンビームのエネルギーに依存することが分かった。帯電の影響を考えているが、一次イオンビーム量への依存性に関しては課題となっている。本結果は宇宙科学研究本部スペース・プラズマ研究会で報告した。
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