研究概要 |
西部北太平洋の亜寒帯前線付近では,局所的な大気強制のみならず黒潮・黒潮続流や親潮の移流効果による海面水温変動が存在する.このような海域における海面水温変動は局所的な上向き海面熱フラックスに能動的な役割を果たしていることが示されている(Tanimoto et al.,2003,谷本他2003).そこで,このような海面水温偏差を下部境界条件として大気大循環モデル(AGCM)を用いたいくつかの数値実験を行った.本研究課題は季節遷移期である春季・秋季に着目している.冬季に顕著になる海面水温偏差は海洋混合層が持つ熱慣性のため,春季にかけて徐々に減衰する,このような亜寒帯前線付近に冬季から春季にかけて観測される海面水温偏差が季節遷移期の大気大循環場にどのような影響を与えているかを調べた.その結果,対流圏上部の300hPa高度場においては北緯50度の緯度円に沿って,オホーツク海上に低圧部,その東のアリューシャン列島付近に高圧部,アメリカ大陸西海岸付近に低圧部が4-5月に形成されやすいことが示された.このようなプラネタリースケールの形態は中緯度の海面水温変動に直接励起されるのか,非定常擾乱などを介して間接的に形成されるかをさらに明らかにする必要がある. 亜寒帯フロント付近の海面水温偏差は下層雲と海面水温の相互作用により夏季にも形成される.夏季の海面水温偏差が秋季における北太平洋上の大気大循環場や雲量の分布などにどのように影響を与えているは現在実験と解析を進めているところである.
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