研究概要 |
本年実行した以下の3研究項目について概要を述べる. 大気循環と波動伝播の変化 大気のwave activity fluxを解析により,アリューシャン低気圧の強化が顕著な1976年のシフトでは北太平洋45N付近にfluxの発散が見られるのに対し,East Pacific Patternの変化が卓越する1998/99年の変化では30Nと60Nに発散の中心が存在することが示された.この事実は,1970年代のシフトと1998/99の変化とは異なるSSTパターンと関係していることを示唆するものである. 十年スケール変動の同期理論 すでに申請者がデーター解析から提案した20年変動と50-70年変動との同期を,理論的に説明することを意図した.本研究では,可能な限り簡単化した遅延振動子理論(Saurez and Schopf 1988)に,最小の変更を加えた二つのプロトタイプ方程式について検討した.一つは同時フィードバックの強さが時間的に変化するもので(周期的変調),他の一つは周期的に変化する外力項が付加されるものである(周期的外力).周期的変調の場合は,振動周期は変調周期の2倍・4倍となり,偶数倍周期の同期が生じた.一方周期的外力の場合は,振動周期は変調周期の3倍・5倍となり,奇数倍周期の同期が生じた.これらの同期現象は,同時フィードバックが一定の大きさを持つ抵抗として働き,他の項の寄与がその抵抗(閾値)よりも大きい場合に,符号反転が可能となるという従来注目されることの無かったメカニズムによって,統一的に説明することができた.この研究は,Geophysical Reserach Lettersに投稿中である. 海洋から大気へのフィードバック 海外共同研究者である謝教授が衛星データーを駆使し,北太平洋・北大西洋での海洋が大気に影響を与える一連の証拠をまとめた.一方見延は,独自に作成した高解像度のSSTデーターを用いて,北太平洋の亜寒帯フロント・亜熱帯フロントの20世紀を通じた十年スケール変動を明らかにし,また湾流フロントが北大西洋数十年変動と関連する顕著な変化を示していることも明らかにした.
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