平成16年度は、TRMM降雨レーダー(PR)データを用いて、TRMMマイクロ波放射計(TMI)から求めた海面水温(SST)と海上の降雨特性との関係を調べた。また、平成15年度に作成したTMIとPRとのマッチアップデータを用いて、異なる観測から得られる降雨特性の比較を行った。主な結果を以下に示す。 (1)海上の降水は、SST上昇と共に、対流雨も層状雨も降雨面積が増えた。Lindzen他(2001)のIRIS仮説はSSTと共に層状性雲の面積が減るという傾向を示すが、層状雨には同様の効果は見られなかった。また海上の降雨の特性が、25℃前後のSSTで急激に変化することを示した。25℃以上の暖水域では、対流雨も層状雨もともに降雨強度がSST上昇に伴ってやや弱くなっていく傾向が顕著に見られた。これはこれまで統計的に指摘されていない新しい発見である。 (2)降雨量の他に、降雨レーダー(TRMM・PR)で明示的に得られるようになった対流雨/層状雨比、降雨頂高度、降雨強度、および日変化の統計をとることにより、降雨の特性がよく表現できることを示すことができた。同じくTRMM搭載の雷センサー(LIS)データによる雷頻度も背が高く強い降雨特性をよく表現することが示された。これらの情報をサンプリングの優れたTMIなどのマイクロ波観測から引き出せるようにすることを下記(3)で行う。 (3)TRMM TMIとPRのマッチアップデータを用いて、TMIの輝度温度データと陸上の降水の対応を調査した。その結果、TMIの高周波(85GHz)の偏光補正済み輝度温度(PCT)は、降水トップと相関が高く、降水コアやアンビル域で非常に低温になることが分かった。また、より波長の長い37GHzのPCTは、降水トップに対して比較的感度が小さいため、85GHzと組み合わせて、降水強度と降水トップを推定することが期待される。
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